“次の週末”を豊かに
やりたいことや好きなことが見つからず、身動きが取れなくなってしまっても、次の週末、何をしたいか考えることならできるかもしれない。村上萌さんが提案するのは、ちょっと頑張れば手が届く少し先の未来のこと。近すぎて見えなかったものにも向き合うことができて、予想もつかない3年後へも確実に歩みを進められる。自身が主宰するコミュニティメディア『NEXTWEEKEND』が提唱する“次の週末に叶えたい、理想の生活”とは、目の前にあるものを“自分ごと”として捉え、人生を自分のものとして動かすことなのだと、迷いのない言葉で語ってくれました。
「大学を卒業したあと、すぐには就職しなかったんです。まずは自分ができることを見つけようと、仕事を探してさまざまな人に会い、プレゼンを繰り返す日々を送っていました。1年ほど経つと少しずつ、自分の提案が目指すところに共通する部分があるのが分かってきて。それは、今日でも3年後でもない、次の週末、何にワクワクするのか。これをブランド化したいと思ったのが、『NEXTWEEKEND』のスタートです。
賛同する仲間たちとチームをつくり、“季節の楽しみに小さな工夫”をコンセプトに掲げたWEBサイトを立ち上げて、楽しいことを読者が自らの手で生み出すためのアイデアを発信しはじめました。自分の存在価値を見失ったり、夢を持つことも難しく考えてしまう。モノや情報に溢れた時代に生きていて、恵まれていることによって、どう生きればいいのかが分からない——。このトンネルを抜ける方法として、「まず、次の週末にやりたいことを見つける」ことの大切さは、何気ない友人とのやりとりのなかでも実感していたと言います。
「何か相談されてアドバイスをするとき、 “それ、ちょっと頑張れば次の週末にできるよ”って言うと元気になってくれるのを身にしみて感じたので、本当に人の背中を押したいと思うときに、この距離感はちょうどいいと思ったんです。もちろん、週末というのは概念であって、ウィークエンドだけお祭りのように過ごし、平日は無ということじゃない。目の前の景色が変わることを待つのではなく、自分の思考回路を変えて欲しいなと。そうすれば見えてくるものも違ってくるはず。誰のものでもない、毎日を楽しくするのは自分なんだ!と腹をくくってしまえばいいんですよ」
起業家として精力的に活動し、プライベートではアスリートの夫を支える妻であり一児の母。忙しくも充実した日々を送る村上さんのプライベートをのぞいてみると、心をときめかせる週末の工夫がいたるところに散りばめられています。
「季節を五感で感じるために、オフィスにも自宅にも花を飾っているのですが、それがあるだけで部屋が生気で満ちるんです。この花がせっかくきれいに咲いていてくれるのに部屋が散らかっていたらもったいない、じゃあ片付けよう、という風に、好循環のスイッチが入ります」
Jリーガーとして活躍する夫は身体が資本。パートナーとして、食事面でのサポートは栄養バランスに気を配るのはもちろんのこと、村上さんのInstagramにアップされる食卓のコーディネートは、愛あるひと手間をかけたものばかり。
「料理のレパートリーも“またこれ?”とならないように、どう面白くアレンジできるかを考えます。はじめての野菜を買ってみたり、組み合わせ方を変えてみたり、同じことをやり続けるのではなく、好奇心を持って変化させること。最近は、ローズシロップをハヤシライスに少し入れてみたらとても美味しくできて大成功でした」。
チームの移籍に合わせて、生活の拠点を変える暮らしのなかにも、自ら楽しさの種を蒔き、育んでいます。どこへ行っても地元の人よりその地域について詳しくなり、移住を繰り返すたび、再び会いたい人も増えてきました。
「今は大阪と東京を行き来していますが、関西ってそこらじゅうに歴史があってワクワクする。昔、何があった場所かを調べるのが面白いし、人も親しみやすいし、街がコンパクトだから、自転車でどこへでも行けるんですよ」