2021.12.01

  • beautiful life

ヘアメイクアップアーティストが明かす映画作品の撮影現場

ルベルは映画・ドラマなど、数多くの作品に美粧協力し、エンターテインメント作品を支えるプロフェッショナルをサポートしています。

映画をはじめとするエンターテインメント作品で、役作りのカギのひとつであるヘアメイク。映画を中心に、エンターテインメントの世界で活躍されているヘアメイクアップアーティスト・礒野亜加梨さんに映画作品のヘアメイクのポイントや仕事道具、撮影現場でのエピソードを伺いました。

ヘアメイクアップアーティスト
礒野亜加梨(studio mamu)
福井県出身。福井県理容美容専門学校卒業。
美容室勤務を経て、2011年よりヘアメイクとして活動を開始。映画、ドラマなど数多くの作品を手がける。広告、雑誌、写真集、舞台、ライブなど幅広いジャンルにて活躍中。
主な映画作品
「HiGH&LOW THE WORST」「PRINCE OF LEGEND」「兄に愛されすぎて困ってます」「黒崎くんの言いなりになんてならない」

スクリーン越しの見え方とつながりを計算してスタイルをつくる

私の場合は、“ナチュラル”よりも“作りこむ”スタイリングを担当することが多いですね。映画のヘアメイクでは、スクリーン越しで理想の仕上がりを実現させる必要があります。痩せている人が画面越しだと太って見えることがあるように、作りこんだヘアメイクでも、画面に映ると普通に見えることが多いです。メイクの濃さや、ヘアスタイルの空間の作り方や毛筋の入れ方なども映画、雑誌、テレビ番組など、それぞれ作り方を変えるようにしていますね。

衣装や背景、照明とのバランスも考えながら画面に映った時の仕上がりをイメージします。例えば、背景が暗めのときには前髪の空間を多めにしたり、ふわっとした明るい背景のときは、毛束が固く見えやすいので、毛の1本1本を繊細に仕上げたりもします。スタイリング剤も天候に合わせて選んだり、使う分量も変えたりしています。

それから、映画撮影の場合、作品全体を通してのヘアメイクのつながりも大切です。長期間の撮影になると見え方がつながらないこともあるので、気になるところは数ミリ単位のカットで現場で調整していくこともよくありますね。

毛筋を入れるためのコームも礒野さんの愛用品

スタイリングは遠心力に弱い

激しい動きのシーンでは、走るときに風で髪が流れることよりも、遠心力に耐えられるように作りこむようにしています。例えば、喧嘩のシーンで殴られて頭が大きく振られると遠心力がかかりますよね。遠心力は、他の動きよりもキープがしづらく、ヘアスタイルが崩れやすくなります。これは、卓球の作品で実感しました。(笑)

アクションやスポーツやダンス系の作品の場合は、本番までに10回以上リハーサルやカメラテストがあることが多いです。途中で崩れないように、動いた後もすぐに元に戻るようなヘアスタイルを意識して作りこみをしています。髪が肌に付かなければ、汗が原因で崩れるということも少なくなります。

「礒野さんにお願いすると、スタイルが崩れにくいね」って現場で言っていただけることも多いのですが、根元の作りこみが一番重要だと思っています。根元は髪のクセが出やすい部分なので、必ず根元の矯正をしてから、立ち上がりやヘアスタイルの全体を調整するようにしています。

目が見えないと芝居ができない

映画監督には、『目の芝居を大事にしたい』と言われることも多いですね。暗い性格の役で、目に前髪がかかる場合でも、長い前髪の間から黒目は見えるようにしたり。とくに金髪の場合は、黒目に少しでも金色がかかると顔の印象が変わるので、目で魅せる芝居のときは気を付けています。それとは逆に片目を完全に隠したいというときもあります。そういった細かい部分にも作品に対する監督のこだわりがありますね。

映画の台本やノートには、役毎にシーンのつながりを記録したりヘアスタイルのイメージを書き込む

監督とは、事前にヘアスタイルの打ち合わせをします。本人と違うイメージを出すときには、衣装を着てもらい、写真などで髪型のイメージや方向性を確認します。金髪のヤンキーの役でも、荒々しくするか、きれいめに作るか、金髪が顔色に合うかなど細かく打ち合わせをして決めていきます。イメージを伝えて、必要な時にはカラーやパーマをお願いすることもあります。カラーは撮影の何日前に染めるかなど、役にあわせて色落ち具合も計算するんです。

映画作品は、長期間かけて現場にいるみんなで作り上げるものです。だからこそ、映画が完成した時の達成感もひとしおです。半年から1年経って作品が出来上がったとき、その時のことを振り返ると感慨深いですね。作品に携わり多くの人の髪を触ることで、スタイルの持たせ方、ヘアチェンジの仕方など、その時に感じたことを次の作品のスタイルづくりに活かすことができています。

ヘアチェンジのしやすさもスタイリング剤選びのポイント

いつも現場に行くときに欠かせないアイテム

現場では、最低でも12時間以上キープさせなくてはならないということも多いです。動きにあわせて何度も手直しを入れるときは、トリエ スプレー 10をよく使っています。髪が白くなりにくくヘアチェンジもしやすいので、現場のマストアイテムですね。映画撮影の現場に行くと、大半のヘアメイクの方がトリエを持ってきているのを見かけます。トリエなら“ちゃんと固まる”っていうのは、現場では共通認識になっていますね。

ヘアメイク中に出演者と使ったスタイリング剤の話で盛り上がることも多いのですが、SEE/SAWクリアオイルは、「私もこれ好き」と言っている女優さんがいました。軽すぎず重すぎずベタっとしすぎないオイルなので、艶感が欲しい時は、キープさせるためにワックスと一緒に使ったり。少しウェットな仕上がりにする時には単品で使っています。SEE/SAWヘアメイクスティックもシルエットをきれいに出したい時など、撮影ではかなり使えると思います。

プライベートでは、モイ オイル レディアブソリュートが大好きでよく使っています。香りも好みで、オイルの重さも私の髪にはぴったりです。

 

現場では、あえて艶感が出ないスタイリング剤を使うこともあります。作品の世界観や役柄を表現するのが映画のヘアメイクなので、必ずしもきれいに作るだけではありません。だから、世の中にある様々なスタイリング剤の中から、気になったものは色々試すようにしています。役作りや出演者の髪質に、ベストなスタイリング剤を使いたいですね。作品を見てくださった方の心を動かせるスタイルがつくれたらいいな、と思いながらいつも作品に取り組んでいます。

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