2022.10.28

  • hair science

トリートメントの科学

ヘアケア意識が高まる中で欠かせないのがトリートメント。その需要はホームケアだけでなく、サロン でもメニューの柱の一つとなっています。
トリートメントはどのような成分で作られているのか 、髪の状態を整えるしくみや効果的な使い方について解説します。

●トリートメントの目的

トリートメントの目的は、毛髪のダメージ補修です。カラーやパーマなどにより負担がかかった髪 を補修し、日常生活で受ける物理的ダメージを軽減させる役割があります。毛髪内部に水分や油分を取り込み健康な状態に近づけ、毛髪表面を保護することで外部刺激から守りダメージを抑制します。また、毛髪表面が整うことによりツヤが出て見た目が美しくなり、手触りや指通りも良くなります。

●トリートメントの種類

近年では様々な種類の「トリートメント」が存在します。

<リンス>
シャンプー後、マイナスの電荷を帯びている濡れた毛髪に、リンスの主成分でプラスの電気を帯びているカチオン性界面活性剤が吸着。毛髪の表面に被膜をつくり、すべりを良くして毛髪を整えやすくし、静電気の発生を防ぎます。

<コンディショナー>
リンスの保護効果をより高めたもの。リンスに比べて油剤やコンディショニング成分の配合が多くなっています。近年、毛髪が傷んだ人の増加に伴い、リンスと同様に用いられるようになりました。

<トリートメント>
主成分であるカチオン性界面活性剤や油性成分が毛髪表面に付着して、毛髪をなめらかにします。また、トリートメント成分(油分 ・水分・PPT※など)を毛髪内部に補給し、ダメージを受けた毛髪を健康な状態に近づけます 。ヘアカラーやブリーチが一般化され、毛髪の傷みを気にする人が増えたことにより、トリートメントの需要が高まり広く使用されています。
※タンパク質加水分解物

<ヘアパック・ヘアマスク>
ヘアパック、ヘアマスクともに、基本的にはトリートメントと同じ 構成です。目的に応じてケア成分の含有量を高め、集中的に作用させることでコンディショニング機能をより充実させており、週に1回程度、トリートメントの代わりに使用します。

<アウトバストリートメント(洗い流さないトリートメント)>
シャンプーやトリートメント後の濡れた髪や乾いた髪に使用。手軽なことに加え、トリートメントの成分がすべて髪に残るため持続性が高くなります。ドライヤーの熱を利用し、補修効果を高めるタイプも。

<システムトリートメント>
主にサロンメニューとして使用されるトリートメント。異なる成分同士を反応させ定着する効果がある2剤式や3剤式の「組み合わせタイプ」や、 プレ処理としてPPTや油分などを塗ることによりトリートメントの効果を向上させる「重ね塗りタイプ」などがあります。どちらのタイプも複数のステップに分けて 施術することで、より効果的に作用させることができ、持続性を高められます。

【コラム】アウトバストリートメントの使い分け

お風呂の外で使用する「アウトバストリートメント」には、さまざまな タイプがあります。
髪質や求める質感、ライフスタイルに合わせて最適なアイテムを選びましょう。

オイルタイプ
■シリコーンベース
「ジメチコン」「ジメチコノール」などのシリコーンが多く含まれており、コーティング効果が高く、毛髪になじませるとなめらかでサラサラになります。ダメージによる毛髪の絡まりや引っかかりを改善するので、指通りを良くしたい方におすすめ。

■植物油ベース
「シア脂」 「ホホバ油」などの植物油が多く含まれており、シリコーン類はほとんど配合されていません。保湿効果が非常に高く、しっとり感やおさまり感が得られ、束感が出やすいことから、スタイリング剤として用いられることもあります。“オイル感”を求める方におすすめ。

クリーム/ミルクタイプ
水分と油分がバランス良く配合されたヘアトリートメントベースの剤型。オイルタイプでは得られにくい、みずみずしさや潤いが感じられます。髪をふんわりとやわらかく自然な仕上がりに演出しやすいため、パーマスタイルなど動きを出したい方に おすすめ。

ミスト/リキッドタイプ
保湿剤などの水性成分が多く配合された化粧水ベースの剤型。寝ぐせ直しのような毛髪用アイテムの他に頭皮に使用できるアイテムもあります。サラっとした軽い使用感が特徴でふんわりとしたシルエットをつくりやすいため、髪がペタンとなりやすいなどの悩みがある方におすすめ。

●トリートメントってなにでできているの?

トリートメントには、毛髪の保護や髪の損傷を補修し潤いや艶を与える保湿成分や油性成分、シリコーンが配合されています。そのほか、水と油分両方になじみ乳化するカチオン性界面活性剤や、品質を安定させて変質(酸化や分離)を防ぐための安定剤や防腐剤、香料など使用時のリラックス効果に関わるための成分なども配合されています。

●髪のコンディションを整えるしくみ

トリートメントは毛髪に付着して保湿成分や油性成分を毛髪表面や内部に浸透させることで、効果を発揮します。

カチオン性界面活性剤によって プラスの電荷をもった 粒子が、シャンプー後にマイナスの 電荷を帯びた毛髪と 電気的に引き合い吸着します。

吸着したカチオン性界面活性剤が、保湿成分を毛髪内部へと浸透させます。

保湿成分と油性成分が毛髪全体へ行きわたります。トリートメントが洗い流された後は、カチオン性界面活性剤と油分が適度に残り毛髪表面を保護します。

●トリートメントの効果的な使い方

ポイントを押さえたひと手間で、効果がアップします。

・毛先からなじませる
最も傷みやすい毛先から塗布し、全体へなじませます。トリートメントが根元に過剰に付着するとベタつきやボリュームダウンの原因となることがあるため注意しましょう。根元付近はダメージ度合いが低いため、毛先を塗布したあとに手に残ったものを軽くつけるだけでも十分です。

・粗めのコームで全体をなじませる
濡れた状態の髪は束になりやすく、しっかりトリートメントを塗布したつもりでも均一になじんでいないことがあります。
毛髪に負担の少ない目の粗いコームでとかすことにより、毛髪全体へトリートメントが均一になじみます。

・放置する
塗布後に数分(3~5分)時間をおくことで、 効果がアップします。ホームケアでも蒸しタオルで包んだり、シャワーキャップをかぶったりして毛髪を温めると、トリートメントがより効率よく浸透します。
ただし、長く放置しすぎると毛髪や頭皮のべたつきにつながるので注意しましょう。

ヘアケアには欠かせないトリートメント

トリートメントは、パサつきや髪の絡まりを軽減するほかにも、 ヘアカラーの褪色を抑える効果があります。トリートメントでしっかりと髪を補修することで、色素が髪の内部にとどまりやすくなり、シャンプーの洗浄成分で色素が洗い流されることを防ぎます。
このようにトリートメントは、髪のダメージを補修するだけにとどまらず、髪の艶や潤い、美しさをキープするために重要な役割を担っています。

参考:『きほんの毛髪科学』(女性モード社刊)

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