2021.02.26

  • hair science

毛髪の基本構造~それぞれの役割と髪が生える仕組み~

つややかで美しく健康な髪…理想の髪になるために、まずは毛髪の仕組みを理解することから始めてみましょう。毛髪は、どうやって成長していくのか。どれぐらいの寿命なのか。そして、どのような役割と特徴を持つ成分で形成されているのか…。毛髪への理解を深めることで、適切なケアもわかってくるはずです。知っておきたい毛髪の基本構造について解説します。

毛髪の成長~どうやって生えるの?

毛髪は、毛根の下側にある毛球から生えていきます。毛球は、毛乳頭を包み込んでおり、この毛乳頭が毛細血管から毛髪の原料となるアミノ酸やビタミン・ミネラルなどの栄養を受け取ります。そして、毛乳頭は、毛細血管から受け取った栄養を毛母細胞に渡し、栄養を受け取った毛母細胞は、角化移行部にて分裂を繰り返して数を増やしていきます。こうすることで、積み重なって押し上げられ、毛髪に変化(角化)し、髪が伸びていきます。

へアサイクル(毛周期) ~どうやって生え変わるの?

日本人の毛髪本数は平均10万本といわれており、1日で約50~60本の毛髪が自然に抜けていきます。毛髪の成長速度は1ヶ月に1 cm程度で、1本の毛髪の寿命は男性の場合で3~5年、女性の場合で4~6年ほどです。この1本の毛髪が生まれてから抜け落ちるまでの周期を「毛周期」といいます。毛周期は、成長期、退行期、休止期、発生期の4つの時期に分けられます。

 

毛髪の基本構造 ~どんな組織と成分でできているの?

毛髪は、外側から順に「キューティクル」、「コルテックス」、「メデュラ」の3層で形成されています。

「キューティクル」は、無色透明のウロコ状で、1枚で毛髪の外周の1/2~1/3を包みながら、タケノコの皮や屋根の瓦のように重なって、毛髪全体を包み込んでいます。重なるキューティクルの枚数が7~10枚程度で硬毛、3~5枚程度で軟毛になり、個人差があります。

「コルテックス」は、葉巻状の形をしていて縦方向につながり、比較的規則正しく並んでいます。毛髪の色を決定するメラニン色素は、コルテックスの中に存在し、日本人のような黒髪の毛髪にはメラニン色素が比較的多く存在します。

「メデュラ」は、海綿のように空間が多く存在する多孔質状の構造をしています。キューティクルやコルテックスのように規則的な構造をしておらず、スポンジ状ケラチンともいわれる不規則なケラチンや多くの空間から構成されています。また、キューティクルやコルテックスと比べて脂質に富んだ領域でもあります。メデュラは毛髪に必ず存在するわけでなく、その在り方も非常に多様性に富んでいます。1本の毛髪においても、部分によってパターンは異なります。メデュラの機能については、現在もなお研究が進められていますが、特に明るい髪色において、その髪の見た目に影響することが分かってきました。

次に、「キューティクル」、「コルテックス」、「メデュラ」それぞれの構造を詳しく説明していきます。

キューティクル ―毛髪を保護する組織―

毛髪の最表面は、「キューティクル」とキューティクル同士を接着する「CMC(細胞膜複合体)」でできています。このキューティクル領域は毛髪の10~15%を占め、毛髪のツヤや手触り、硬さに影響します。また、ブラッシングなどの物理的刺激および、水や薬剤などの化学的刺激から毛髪内部を保護する役割があります。

キューティクルは、外側から①エピキューティクル ②A-層 ③エキソキューティクル ④エンドキューティクル ⑤inner-層の5層でできています。キューティクルとキューティクルの間にあるCMCは、外側から⑥lower-β層 ⑦δ層 ⑧upper-β層の3層構造となっています。

コルテックス ―髪の内部を形づくる組織―

毛髪の内部の大部分は、「コルテックス」とコルテックス同士を横方向で接着する「CMC」でできています。このコルテックス領域は毛髪全体の85~90%を占め、水分を保持し、毛髪の強度やコシ、髪色、透明感や動きのあるツヤ感に影響します。

コルテックスは、数個から数十個のマクロフィブリルが集まってできています。マクロフィブリルの間には、親水性の高い非ケラチンタンパク質があり、メラニン色素やNMF(天然保湿因子)が含まれています。マクロフィブリルは、さらに数個から数十個のミクロフィブリルとマトリックスでできており、ミクロフィブリルは8本のプロトフィブリルの集合体です。プロトフィブリルは、4本のフィブリルが集まってできています。つまり、マクロフィブリルはマトリックスとフィブリルでできています。

メデュラ ―髪の中心にある組織―

従来、メデュラは、顕微鏡下(透過光観察)で暗く不明瞭なものとして認識されていました。そもそもその存在すら曖昧で、仮に存在する場合は連続的か断続的なのか?そこまでの認識でした。

ルベルでは、見え方の異なるメデュラが存在していることを発見し、従来から認識されていたメデュラを「ブラックメデュラ​」、新たに発見したメデュラを、明るく白い明確な見た目から「ホワイトメデュラ​」と名付けました。メデュラの内部に存在する空間の量により光の散乱状態が変化するため、見え方が異なります。ブラックメデュラ​ は空間が多く光を強く散乱させますが、ホワイトメデュラ​は空間が少ないため光をあまり散乱しません。

 

この違いは、髪の毛の透明感やツヤ(特に髪の毛の内部に入って反射してくる背面反射)に影響します。そのため、髪色を決定するメラニンのような見た目に強く影響を与える因子が少ない場合、この差がより顕著になります。例えば、毛髪の中に目立つ白髪があった場合、その髪はほぼブラックメデュラ​で構成されています。ツヤと透明感がない、白っぽく目立つ白髪を集めたところ、ブラックメデュラ​が98%以上を占めていました(当社調べ)。きれいな髪にはキューティクルやコルテックスも重要ですが、深みのあるツヤや透明感を目指す上ではメデュラの状態も重要です。(研究レポートはこちら)

 

 

毛髪を形成する組織そのどれもが、毛髪の強度やコシ、髪色、透明感、ツヤなどに影響を与える重要な役割を担っています。ヘアサイエンスを通じて自分に合った最適なケアを取り入れて、内側から美しく健康な髪をつくりましょう。

参考:『きほんの毛髪科学』(女性モード社刊)

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