2025.08.01

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化粧品の皮膚刺激リスクを予測する新規試験法の開発

新しい処方の安全性を確認する方法として、タカラベルモントでは動物実験は行わず、パッチテストによる安全性試験を採用していますが季節や個人差の影響を受けにくい、より安定的な試験法の確立が求められていました。そこで研究を進めた結果、表皮培養細胞(ケラチノサイト)を用いた新たな評価方法を開発しました。

新たな評価方法の必要性

化粧品は原料の組み合わせで作ります。原料の安全性を確認する方法として、過去には医薬品や食品などと同様、化粧品でも動物実験が行われていましたが、現在では倫理的な観点から見直され、代わりにさまざまな代替法が用いられるようになっています。
タカラベルモントでは製品の安全性を評価する方法としてパッチテストを採用していますが、実際の使用条件や体質によって結果にばらつきが生じることがあり、さらに一定の時間とコストがかかるという課題もあります。そこで、より安定した条件でスピーディーに安全性を確かめられる独自の試験法の開発が求められていました。

シャンプーの安全性を測るための新たな試験法

化粧品の中でも皮膚トラブルが起こりやすい製品がシャンプーです。シャンプーが肌に合わないという場合には原因の多くが界面活性剤と考えられますが、これは汚れを落とす働きをしてくれる成分でもあります。
シャンプーに使用される界面活性剤の数は1000種類以上もあり、製品のコンセプト や求めるパフォーマンスに応じて複数の界面活性剤を組み合わせて処方します。配合パターンは多岐にわたり、組み合わせによって製品ごとの安全性は異なるため、成分単体での評価だけでなく、実際の製剤としての安全性を確認することも重要です。

シャンプーの安全性を測る方法として、新規試験法を構築しました。
人の皮膚を作る細胞である「ケラチノサイト」は、表皮の大部分を占める表皮細胞の一つです。
表皮では細胞分裂によって毎日ケラチノサイトが生まれています。新しく生まれた細胞に押し上げられた細胞は、上部にある角層に達すると角層細胞に変化し、さらに角層の一番上まで到達して最後にははがれ落ちます。
ケラチノサイトとは、このように角化という分化過程を経て角層細胞へと変化する細胞で、シャーレで培養すると一面に細胞がはりつき、増殖します。そこに、試験対象である各シャンプーを濃度別に加え、「ケラチノサイトがダメージを受ける濃度」を見極めました 。

界面活性剤によるダメージを受けない細胞は、染色するとピンク色に染まります。染まり具合を見て、影響の大きさを確認します。
ダメージを受けはじめると染まりづらくなります。その時点のシャンプーの濃度が濃いほど、皮膚トラブルが起こりづらいといえます。

〈細胞試験の写真〉

この新規試験法により、同じ試験対象かつ条件のもとで行う安全性比較が可能になり、それぞれの界面活性剤製品の安全性を数値化することができました。

パッチテスト結果との相関性

ケラチノサイトを用いた試験の結果と、従来行っていたパッチテストの結果を比較しました。
はじめにシャンプーを対象に、過去20年間に行ったパッチテストの結果より約100製品の結果を集め、そのうち約30製品を対象に本試験法による安全性評価を行いました。この2つの試験結果を比較したところ、高い相関性が認められました。

さらに、新規試験法により製品だけでなく原料の安全性を確認することで、処方化前 に短期間で多くの原料をスクリーニングすることが可能になりました。原料そのものの安全性を一元管理し、処方に最適な原料の選択をすることができるのです。それにより、処方設計のスピード化と安全性の両立も実現しました。

より多くの方が安心できる製品開発をめざして

現在では、ケラチノサイトを用いた試験法のノウハウを活かし、シャンプーだけでなくカラー剤やパーマ剤などほぼすべての製品の皮膚刺激リスクを予測できるようになりました。実際の開発現場でも運用が始まっており、製品の安全性評価に役立てられています。
タカラベルモントの製品を使用する方は、年齢・性別・国籍、皮膚状態や使用頻度も様々です。一人でも多くの方に安心して製品を使っていただけるように、今後もより多角的な観点から安全性を評価できる体制を強化し、安全性の評価精度を高めることで、より安全な製品をお届けしたいと考えています。

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