
髪は、相手に与える印象や自己表現を支える重要な存在です。しかし、ブリーチなどの施術やドライヤーからの熱、一年を通じて降り注ぐ紫外線(UV)によって、髪の内側では静かな劣化が進みます。そこで、当社独自の蛍光イメージング技術を活用し、毛髪内部に生じる変化の“見える化”に取り組みました。
特に、誰もが影響を受けるUVに着目し、毛髪ならではのUV影響の評価方法を確立、そこから見えてきた対策の方向性を紹介します。
毛髪へのUV影響を可視化
“見える化”へのアプローチの要となるのは、FS‑SR101染色(フルオレセインNa:緑/スルホローダミン101:赤)、蛍光顕微鏡観察、画像解析の組み合わせです。
FS‑SR101染色では、毛髪を輪切りにして作成した横軸切片(スライス)に、それぞれの色素で順番に染めます。それを蛍光顕微鏡で観察すると、2つの色素の化学的性質などの違いにより、健康毛では毛髪内部を緑色と赤色で染め分けていることが確認できます。

従来のFS-SR101染色では、染め分けのパターンが“くせ毛”と“直毛”、“しなやかな髪”と“それ以外の髪”といった髪質の違いと関係していることが注目されてきました。
今回、FS-SR101染色を“UV暴露のダメージを受けた毛髪”で試したところ、まず外側から緑色の蛍光パターンが消失しはじめ、やがて染まらなくなることがわかりました。

上記の現象は、ダメージが毛髪内部に及んで内部構造の隙間や化学的性質が変化し、その結果として、化学的性質の異なる2種類の色素のうちの緑色が染まりにくい/抜け落ちやすい状態になったためと考えられます。このような現象を毛髪内部のダメージによる構造変化にも活用できるのではないかと考え、毛髪への影響度の可視化と数値化に取り組むことになったのです。
毛髪へのUV影響を数値化
具体的には、同じ毛髪の根元0〜2cmを半分に分け、片側を遮光(①)、もう片側を非遮光(②)として、UVの照射あり・なしで比較します。

UV照射した後、毛髪を横軸切片(スライス)にしてFS-SR101で染色・蛍光観察を行い、UV照射あり・なしそれぞれの①と②の蛍光画像について緑の明るさを段階(暗い〜明るい)で区切り、“どの段階がどれくらい含まれるか”を数えるヒストグラム(図3左右)として、整理しました。
さらに、この分布(ヒストグラムの形)の離れ具合をユークリッド距離として算出し、1つの数値に置き換えることで、蛍光パターンの違いを客観的に評価しました。

数値が小さいほどパターンの違いは小さく(=健康な状態に近い)、数値が大きいほど違いが大きい(=内部の変化が大きい)、それはUVの影響が強いと解釈できます。
例えば、UV照射なしの遮光部(①)と非遮光部(②)の比較では、ダメージ度はほとんど変わらないので染色パターンの違いはほぼなく、数値は小さくなります。一方で、UV照射をした場合は非遮光部がダメージにより染色パターンが変化してしまうため、遮光部と比較した際に数値が大きくなります。
このように、UVによる「元の構造パターンの変化」を新たに定量化できたことが本研究の特徴といえます。
UVガードに有効なヘアケア成分の発見
一般的な毛髪用UV製品では肌同様にSPF/PAが参照されていますが、肌と毛髪では防御機構が異なるため、髪の「内側」の変化を捉える評価軸が必要となります。
前述したFS‑SR101染色 × 画像解析(ユークリッド距離)は、毛髪ならではの構造変化を指標として評価できる、新しい軸であると考えます。
スクリーニングの流れはシンプルです。まず、候補成分や比較対象(肌用の高機能UV製品など)を毛髪に塗布し、根元0〜2cmを遮光/非遮光に分けて同条件でUV照射。FS-SR101染色の変化度を数値(ユークリッド距離)にして比較することで、内部変化がどれくらい抑えられているかを判断します。抑えられていれば、UVに対する毛髪保護効果が高いと評価することができます。
このスクリーニングの結果、UVガードに有効なヘアケア成分(成分A、B)を発見しました。
従来の製品では、紫外線散乱剤・吸収剤により指摘される、髪の重さやきしみなどの使用感が課題となっていました。発見された成分は、紫外線散乱剤・吸収剤そのものではないため、従来の課題を軽減する処方設計が期待できます。さらに、高機能肌用UV製品(SPF50+・PA++++相当)に匹敵する毛髪保護効果の可能性も、新たに見いだしました。

髪ならではのUVケアをめざして
この発見によって、日々のヘアケアがそのままUV対策になる未来が期待できます。仕上げのトリートメントやスタイリングの“当たり前”の一手が、髪の内側を守り、色持ち・手触り・ツヤを長く保つことになるのです。
今後も、蛍光イメージングを起点に当社が独自に進化させた技術で、理美容師の皆さまと連携し、髪の“内側”から美しさを守る新常識を社会へ届けていきます。
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