
「インナーケア」や「抗酸化」という言葉がすっかり身近になった昨今。医学や生命科学の分野で、細胞をダメージから守る次世代のキー物質として熱い視線を浴びているのが「超硫黄分子(ちょういおうぶんし)」です。実はこの優れた物質が私たちの髪にも元々存在していることが近年の研究で明らかに。タカラベルモントでは、そんな超硫黄分子を深掘りして研究しています。
毛髪内にある超硫黄分子の未知なるはたらき
超硫黄分子は、ジスルフィド結合やチオール基に、さらに複数の硫黄原子が直鎖状に結合した構造を有する物質の総称です。高い抗酸化作用や、細胞の保護、抗炎症など、さまざまなはたらきが発見されており、化粧品分野においても大きな注目を集めています。
毛髪内における超硫黄分子は、主に外側のキューティクルに多く存在していると言われています。熱や紫外線、ヘアカラーなどの酸化ダメージによって減少する一方で、外部から導入することで含有量を高められることが分かってきました。超硫黄分子を導入した毛髪は、その抗酸化作用の高さによって、ダメージによるキューティクルの損傷が抑えられる効果があると報告されています。また超硫黄分子を多く含む毛髪は高い強度を示すことも明らかになっています。
このことから超硫黄分子はキューティクルだけでなく、毛髪の強度に関わるコルテックス領域などにも多く存在することが想像され、さまざまな役割を担っている可能性があると考えられます。そこで、タカラベルモントでは、超硫黄分子の役割をさらに解明するため、毛髪内部における詳細な分布や導入による変化を調べました。
超硫黄分子は毛髪の深部にまで広く存在することを解明
毛髪内での超硫黄分子が存在する「場所」と「量」を評価するために、蛍光染色法「Sulfane Sulfer Probe 4(SSP4)染色」を活用しました。図1のように緑色に光って見える箇所に超硫黄分子が存在しており、発色が強いほどそこに多く存在することが分かります。
縦切りにした毛髪をSSP4染色したところ、キューティクルだけでなく、コルテックスやメデュラにおいても強い蛍光が見られ、これらの領域での超硫黄分子の存在が確認されました。
また、蛍光箇所が均一でなく部分的であったことから、コルテックスおよびメデュラには超硫黄分子を集中的に含む領域が存在すると想像できます。そこで、さらに研究を進め、コルテックスとメデュラにおける超硫黄分子の分布の実態を調べました。
<ルベルの超硫黄分子研究①>コルテックスにおける超硫黄分子の局在
毛髪のコルテックスには、「パラ様コルテックス(水分を通しにくい性質)」と「オルト様コルテックス(水分を通しやすい性質)」という2つの形態が存在しており、その分布や比率によってくせやしなやかさなどの特性に影響を与えていると言われています。
それぞれを染め分ける特殊な染色法(フルオレセイン染色〈FS染色〉/スルホローダミン101染色〈SR-101染色〉)を行い、SSP4染色の結果と比較しました。すると超硫黄分子を示すSSP4染色の蛍光パターンは、オルト様Coを示すSR-101の蛍光パターンと類似していることが明らかに。この結果から、超硫黄分子はオルト様コルテックスと同様の領域に存在することが想像できます(図2)。
<ルベルの超硫黄分子研究②>メデュラにおける超硫黄分子の局在
①メデュラにおいて、SSP4染色の蛍光強度がコルテックスやキューティクルよりも強い領域が存在し、局所的に非常に多くの超硫黄分子が含まれていることが分かりました。(図3〈A〉

②生体内の超硫黄分子を簡便に定量する手法として、Elimination Method for Sulfide from Polysulfide (EMSP)という方法があります。これを活用してメデュラありの毛髪とメデュラなしの毛髪の超硫黄分子量をそれぞれ定量すると、メデュラありの毛髪はメデュラなしの毛髪に比べて、超硫黄分子を約1.2倍多く含むことが分かりました。(図3〈B〉)

③さらに空隙(すき間)が多いメデュラと空隙が少ないメデュラでの比較では、空隙が多いメデュラの方が超硫黄分子を多く含んでいることが分かりました。(図3〈C〉)
<ルベルの超硫黄分子研究③>超硫黄分子導入部位の可視化
1本の毛髪において、SSP4染色の蛍光強度により「根元」と「毛先」の超硫黄分子の量を比べると、日常的なダメージを受けている毛先の方が蛍光が少ないことが分かりました。なお、この毛先に対して超硫黄分子の導入を行い、改めて観察した結果、超硫黄分子を豊富に含む根元の蛍光パターンに近づくことが分かりました。つまり、導入によって毛髪が本来自然に有していた領域に超硫黄分子が供給されていると考えられます。

超硫黄分子が毛髪の物理的な特性に関与している可能性
今回の研究により、大きく2つの可能性が見えてきました。
1.髪の柔軟性やくせへの関与
超硫黄分子がオルト様コルテックスと同様の領域に多く存在することが判明したことで、毛髪の柔軟さやしなやかさ、くせという物理的特徴を生み出すコルテックスの形成やその特徴に対して超硫黄分子が影響を与えている可能性が示唆されました。
2.メデュラの構造形成への関与
メデュラの空隙はメデュラと共に角化に伴って形成されると言われています。
空隙の多いメデュラの方が多くの超硫黄分子を含んでいることから、超硫黄分子の存在が、空隙の形成やメデュラの構造形成にも影響しているのではないかと考えられます。
毛髪本来の機能を最大限に引き出す次世代ヘアケアの芽生え
従来のヘアケアでは、質感成分によるコーティング、補修成分によるダメージのケア、架橋による強度の補てんなどが主流でした。
しかし、研究を進める中で、超硫黄分子の導入により、本来毛髪が持つ超硫黄分子をもともと存在する場所に供給することができることが分かってきました。
将来的にはこの技術によって、「毛髪本来の機能を最大限に引き出すケア」の実現に大きな期待が持てます。タカラベルモントは、本来の健康的な毛髪や質感を維持しながらさまざまなヘアスタイルを楽しんでもらえるような、次世代のケア技術、ケア製品の創出へ向けて、さらに研究を進めてまいります。
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