2022.01.31

  • hair science

皮膚・頭皮の構造と働き ~頭皮トラブルはなぜ起きる?~

「健康な髪は健やかな頭皮から」と言われるように、頭皮の状態は髪の成長に影響します。頭皮の構造や働きは、基本的に皮膚と同じ。では、違いはどこにあるのでしょうか?

つややかで美しく健康な髪になるためには、皮膚に対する理解を深め、適切な頭皮ケアを行うことも大切です。皮膚と頭皮の基本的な構造と働きを解説します。

皮膚とは? ~大切な役割を持つ人体最大の臓器~

人の体全体を覆う皮膚は、面積が成人で約1.6㎡(畳1枚程度)、重さは皮下組織も含めると体重の約16%にも及ぶ、人体で最大の臓器です。皮膚は体の表面を覆って、紫外線などの外部刺激から守ったり暑さや寒さに対して体温を調節したり、皮脂や汗を分泌して乾燥や細菌の繁殖を防いだり、体全体を正常な状態に保つためにとても大切な役割をしています。

皮膚の構造と役割 ~どんな働きをしているの?~

皮膚は、表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造になっています。

表皮 ―保湿とバリア機能―

表皮は、厚さが平均約0.2mmのとても薄い膜です。外側から「角層」、「顆粒層」、「有棘層(ゆうきょくそう)」、「基底層」の4つの層から成っています。

表皮の一番外側にある角層は、厚さが平均0.02mmの非常に薄い膜ですが、体内の水分の蒸発を防いだり、異物の侵入や外部からの刺激から体を守る「バリア機能」という大切な役割を果たしています。

一番奥にある基底層のメラノサイト(色素細胞)は、紫外線の刺激によりメラニン色素を合成し、細胞の核(DNA)を守ります。また、免疫機能をつかさどる細胞(ランゲルハンス細胞)や知覚に関与する神経細胞(メルケル細胞)も存在し、表皮の防御機能を担っています。

 

【コラム】ターンオーバーとは

表皮の一番奥にある基底層で新しい細胞がつくられ、分化を繰り返し、徐々に表面に押し上げられます。それはやがて角層となり、最後は垢(あか)となってはがれ落ちます。基底層で細胞が誕生してから角層になるまで、4週間かかります。この表皮を構成する細胞が生まれてからはがれ落ちるまでの皮膚の生まれ変わりを「ターンオーバー」と呼びます。

真皮 ―ハリと弾力を与える役割―

表皮の内側にある真皮は、平均約2mmの厚さで、皮膚組織の大部分を占めています。

「繊維芽(せんいが)細胞」が、「コラーゲン」「エラスチン」「ヒアルロン酸」などの成分を生成しています。コラーゲンは線維状のタンパク質で真皮に網目状に張り巡らされており、そのコラーゲンをつなぎ止めるように支えているのが、エラスチンという弾力繊維です。その間を埋めるように、ヒアルロン酸などの水分を多く含むゼリー状の基質が存在しています。これらの成分が肌にハリと弾力を与え、皮膚全体を支えています。

さらに、「血管」「神経」「汗腺」「皮脂腺」「リンパ管」などの付属器官が皮膚機能の一環として以下のような働きをしています。

・血管…表皮に酸素や栄養や水分を届け、老廃物や二酸化酸素を回収する働きをする。

・神経…「触った、熱い、冷たい、痛い(かゆい)」などを感じ取る刺激センサー。

・リンパ管…余分な水分や老廃物を運搬して排出する働きをする。リンパの流れが悪いと、「むくみ」や「くすみ」といった現象を引き起こす。

◇体温調節…暑くなれば汗腺から汗を出すことで体温を下げ、寒くなれば立毛筋を収縮させて毛を立たせて寒さを防ぐ。

◇保護膜…皮脂腺から分泌される皮脂と汗腺から分泌される汗が混ざり合って、皮膚表面に「皮脂膜」という保護膜を作り、乾燥から皮膚を守る。

皮下組織 ―保温機能とエネルギーを蓄える役割―

皮膚の3層構造のうち、最も内側にある皮下組織は、表皮と真皮を支えています。部位や年齢によって厚さは異なり、眼瞼(まぶた)や口唇では約2~3mm、太ももなど10mmを超えるところもあります。

皮下組織の大部分を占める皮下脂肪は、外部からの刺激や衝撃をやわらげる役割や、熱を伝えにくい性質による断熱・蓄熱といった保温機能、エネルギーを脂肪として蓄える役割も果たしています。体内で作り出される熱と体内から外気へと逃げる熱のバランスを保つことで、体温を調節しています。

 

頭皮と他の部位の皮膚との違い ~どのような特徴があるの?~

頭皮の構造は、他の部位の皮膚と基本的に同じですが、以下の点で大きく異なります。

  • 頭皮は皮脂腺や汗腺の数が多い。そのため、他の部位の皮膚と比べ、皮脂・汗の分泌量が多い。
  • 髪で覆われているため、蒸れやすい。
  • 頭皮は他の部位の皮膚と比べ、水分を保持する力や異物侵入など外部から守るバリア機能が低い。

このような特徴から、他の皮膚よりも頭皮はトラブルを起こしやすくなります。頭皮は、皮脂や汗が多く分泌されることにより常在菌の増殖や、皮脂の分解が進みやすい状況を生み出します。さらに髪で覆われていることで、高温高湿になり常在菌が繁殖しやすい状況となります。また、目視しづらく手で触れづらいので、トラブルや不調があっても自覚しにくく、洗髪時に皮脂や汗を洗い残すこともあります。

頭皮のトラブルの原因と対処法

大人女性を対象に行った当社調査によると、78%もの人が頭皮にかゆみを感じたり、多くの人が頭皮のトラブルを抱えているということがわかりました。

トラブルといっても様々な状態、要因があります。それらは、どのように起こっているのでしょうか。

  • かゆみやニオイ…頭皮の皮脂や汗が、常在菌によって分解や酸化されたりすると、脂肪酸やアルデヒドに変化して、頭皮を刺激することで引き起こされます。
  • フケやかさつき…頭皮が刺激(洗いすぎや乾燥)などによってバリア機能が乱れ、正常な状態に戻そうとしてターンオーバーが早くなることで引き起こされます。
  • 立ち上がりやボリュームの低下…過剰に分泌された皮脂は髪に移り、根元がべたついたり、ハリ・コシが低下する一因となります。

頭皮のトラブルへの対策は、原因となっている皮脂や汗を頭皮からやさしく取り除くことが一番のポイントです。洗髪後など頭皮が濡れたままでいると雑菌が繁殖しやすくなるため、早めにきちんと乾かすようにしましょう。また、頭皮マッサージなどをおこない血行を促進することで、頭皮の回復力や髪の成長力を高めることができます。美しく健康な髪を育むため、適切な頭皮ケアを行いましょう。

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