「バイオフィルム」は微生物が作る集合体です。目に見える例では、台所の排水溝やバスタブのぬめり、口腔内の歯垢(プラーク)などもバイオフィルムの一つです。
肌にできることも知られており、頭皮にできた場合、毛髪にも影響が出てしまいます。
この記事では、バイオフィルムのことを理解し、健康な頭皮を育むための方法についてお伝えします。
頭皮のバイオフィルムはどのようにできるの?
頭皮には通常約1000種類の菌が存在し、善玉菌と悪玉菌が一定のバランスを保っています。このバランスが崩れると、バイオフィルムが発生します。
まず、液体や固体表面に菌が付着し、増殖が始まります。増殖していく過程で菌などの微生物が多糖類を生成しバイオフィルムを形成します。さらに強固になったバイオフィルムは表面に張り付きます。
菌バランスが崩れる原因は、ストレスや生活習慣の乱れ、乾燥、花粉やPM2.5などの外部刺激により、悪玉菌が増えることが考えられます。 バイオフィルムは対象物にこびりつくため、除去は簡単ではありません。
バイオフィルムはなぜできるの?
バイオフィルムは微生物が持つ生存戦略の一つです。
バイオフィルムが形成されると、界面活性剤や抗生物質などの薬剤への耐性が、100~1000倍向上するといわれています 。好ましい生育環境を手に入れたバイオフィルムは、微生物同士がお互いに情報交換※をしながら自らの役割を果たし、さまざまな外的要因(殺菌剤、抗菌薬などの薬剤、免疫反応など)から身を守っています。
微生物の分離と再定着をくり返しながら大きくなったバイオフィルムは、栄養の枯渇など周囲の環境変化が起こると、自ら構造を分解して壊し、最終的に新しい環境を求めて移動します。
※微生物は「クオラムセンシング」という機構により、周囲に仲間がどの程度いるのか確認し合い、一定以上の数になると活発に活動を開始します。微生物の集合体であるバイオフィルムも、クオラムセンシングにより毒素の産生や栄養を求める運動性、ストレス応答性などを発揮するといわれています。
頭皮や肌にはどのような影響があるの?
頭皮や肌に炎症が起きると黄色ブドウ球菌のような悪玉菌が増えて、バイオフィルムができやすくなるといわれています。その場合、目に見えるなどの実感はありませんが、殺菌や洗浄の効果が低下して菌が増殖するため、炎症はさらに悪化します。
バイオフィルムが頭皮にできると、毛穴や毛髪の根元などに生息し、ケア成分の浸透を妨げたり、炎症の原因になったり、他の原因で起こった炎症が進行してしまうこともあります。
健康な毛髪を育むためにも、バイオフィルムの予防や除去が大切です。
頭皮のバイオフィルムを予防するには?
バイオフィルムは菌のバランスが崩れることによって形成されるため、悪玉菌と善玉菌のバランスを正しく保つことが大切です。そのためには、まず正しい洗髪習慣を身につけましょう。正しい洗髪習慣の基本は、毎日シャンプー・トリートメントを行い、頭皮や髪を清潔に保つことです。
シャンプーは自分の頭皮に合ったものを選ぶことが重要です。「かゆみやフケが出ないこと」「頭皮に優しい低刺激のシャンプーを使うこと」などがポイントとして挙げられます。
<正しい髪の洗い方>
① 髪と頭皮を十分に濡らす
②よく泡立ててからたっぷりの泡で洗う
③十分にすすいでからトリートメントをつけ、流す
④やさしくタオルドライした後、ドライヤーでよく乾かす
また、頭皮の保湿も大切です。
必要以上に皮脂を取りすぎないために、ごしごし洗うのではなく、やさしく揉み洗いするようにしましょう。
保湿効果のある頭皮用の美容液を使うことも有効です。頭皮のマッサージを行い、血行を良くして、乾燥に負けない健康的な頭皮を育みましょう。
生活習慣を見直して健康な頭皮に
ストレスや生活習慣の乱れも、菌バランスが崩れる一つの要因です。
「適度な運動」「栄養バランスの取れた食事」「十分な睡眠時間」「喫煙や過度な飲酒を控える」など、生活習慣にも気を配りましょう。
また、肌の老化の大半は紫外線によるものともいわれています。菌のバランスに影響を与えると考えられ、紫外線対策も必要といえます。
生活習慣や洗髪習慣を改めて見直し、より健康な頭皮を目指しましょう。
- SHARE :