2021.12.15

  • hair science

シャンプーの科学

毎日の習慣であるシャンプー。美しい髪を育むためには、土台である頭皮環境を整えることが大切です。
髪や頭皮を清潔に保つシャンプーはなにでできているのか、汚れを落とすしくみや各成分の役割について解説します。

●シャンプーの目的

シャンプーの主な目的は、毛髪や頭皮に付着した汗や皮脂、スタイリング剤等の汚れを取ることです。

毛穴にたまった汚れが酸化するとニオイの原因になったり、毛が抜けやすくなったりすることがあります。ただし、洗いすぎると必要な皮脂まで取り除いて乾燥を引き起こしたり、過剰な皮脂の分泌を促してしまうので注意が必要です。

また、毛髪表面に汚れやシリコーンが蓄積されると、トリートメントが毛髪に作用しにくくなってしまいます。シャンプーは頭皮だけでなく毛髪に付着した汚れも取ることで、毛髪にトリートメント等のケア成分が作用しやすい状態を作っています。

●シャンプーってなにでできているの?

シャンプーには汚れを落とす洗浄成分だけでなく、毛髪を保護・補修するための成分や、品質を安定させて変質(酸化や分離)を防ぐための成分、香料や清涼成分をはじめとする使用時のリラックス効果に関わる成分等のさまざまな成分が配合されています。

●シャンプーが汚れをとるしくみ

水で落としきれない皮脂やスタイリング剤など油性の汚れは、シャンプーに含まれる洗浄成分(界面活性剤)によって浮かせてから、水となじませて洗い流しています。

汚れがとれるしくみを見ていきましょう。

界面活性剤には油になじみやすい部分(親油基)と、水になじみやすい部分(親水基)があります。

界面活性剤の親油基が油性の汚れに付着し、しっかりと取り込みます。

親水基が水となじむことによって界面活性剤が汚れをキャッチして浮き上がり、汚れと一緒に洗い流されます。

●シャンプーの洗浄成分(界面活性剤)の特徴

シャンプーに配合される、汚れを落とす働きをする界面活性剤は、その種類によって洗浄力や泡立ち、頭皮への刺激性が異なります。代表的な界面活性剤は以下の5つです。

・アミノ酸系 

タンパク質と類似した構造をもつ、保護効果が高く低刺激の界面活性剤。毛髪や頭皮への親和性が高いためしっとりした洗い上がりが得られる。他の界面活性剤によって泡立ちや洗浄力を補いながら使用されることが多い。
例:ココイルグルタミン酸TEA、ラウロイルメチルアラニンNa等

・タウリン系

泡立ち・洗浄力ともに良好で、タンパク質への吸着・変性を起こしにくい界面活性剤。みずみずしくやわらかな仕上がりが得られる。低刺激性ではあるが、アミノ酸系に弱い体質の方には合わないこともある。
例:カプロイルメチルタウリンNa、ココイルメチルタウリンNa等

・酸性石鹸系

頭皮と同じ弱酸性で、タンパク質を変性させにくい、低刺激性の界面活性剤。生分解性が良好なため環境負荷が低く、水の硬度に関わらず泡立ち・洗浄力も比較的良好で、ぬめりも少なくさっぱりとした洗い上がりが得られる。
例:ラウレス-4カルボン酸Na等

・スルホコハク酸系

気泡力・洗浄力は脂肪酸アミド系界面活性剤等に比べてやや劣るが、目への刺激性が少なく、ベビーシャンプーにも使用されることのある界面活性剤。ぬるつきが非常に少ないが、しっとりした洗いあがりが得られる。
例:スルホコハク酸(C12-14)パレス2Na等

・脂肪酸アミド系

気泡力・洗浄力が良好で、刺激性も低く、バランスの取れた界面活性剤。ただし洗い上がりの毛髪はややきしみやすい。なめらかな仕上がりにするため、他の活性剤や保護・補修成分とともに用いられることが多い。
例:PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸Na等

・高級アルコール系

泡立ち・洗浄力・頭皮への刺激性ともに比較的強い傾向。洗浄力が強い分洗い上がりの毛髪はきしみやすく、脂肪酸アミド系と同様に、なめらかな仕上がりにするため、他の界面活性剤や保護・補修成分とともに用いられることが多い。
例:ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸TEA等

●頭皮の状態と適するシャンプー

体質や生活習慣、健康状態によって頭皮の状態はさまざまです。その時の頭皮の状態によって適切なシャンプーも異なります。

・健康な頭皮

皮脂が正常に分泌され、炎症や脱毛等のトラブルも発生していない状態です。健康な状態を維持するため、低刺激性のシャンプーが適しています。

・脂性の頭皮

ホルモンやストレス等の影響により皮脂が過剰に分泌されて毛穴が詰まっている状態です。毛穴に詰まった余分な脂をしっかりと洗浄し、保湿する必要があります。一方で、洗いすぎると過剰な皮脂の分泌を促してしまうので、酸性石鹸系のような適度な洗浄力をもった界面活性剤を使用したシャンプーが適しています。

・乾性の頭皮

季節の変化や過剰な洗浄により頭皮に必要な水分・皮脂が不足している状態です。頭皮の皮脂を取りすぎないようにするため、アミノ酸系界面活性剤等マイルドな洗浄力のシャンプーが適しています。

・荒れ性の頭皮

薬剤の使用や洗いすぎにより、頭皮のバリア機能が落ちている状態です。洗浄力が優しいことに加え、グリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症剤の入っているものが適しています。

 

その他、頭皮にフケやかゆみの出ている場合にはヒノキチオール等の有効成分が配合されている医薬部外品のシャンプーがおすすめです。

 

上記はあくまで一例です。ヘアサロンでは髪や頭皮のプロが一人ひとりの状態に合わせたアイテムを選定することによって、健康な髪と頭皮を叶えるサポートをしています。シャンプーは、処方技術の進化やヘアスタイルの流行、社会情勢に合わせて時代ごとに変化を遂げてきました。しかし、いつの時代でも自分に合ったシャンプー選びができていなければ、頭皮環境が悪化する原因となってしまいます。毎日使用するシャンプーだからこそ、こだわりをもって自分に合った製品を選ぶことが「未来の髪の美しさ」につながります。

 

参考:『きほんの毛髪科学』(女性モード社刊)

からだの内側から髪と頭皮を元気にする方法はこちら

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