2023.06.30

  • our technology

くすみを抑え、やわらかな透明感のある艶髪へ~レイリー散乱の応用~

現在、SNSでは写真だけにとどまらず、動画も1つの表現方法として積極的に発信されています。動きが映る動画では、髪から生まれる動きも印象をつくりだす要因のひとつです。
ナチュラルな印象とやわらかな透明感のある艶を求めた結果、「レイリー散乱」という光の現象に着目しました。レイリー散乱を応用した新しいメカニズムについて解説します。

透明感を感じる青み~レイリー散乱とは?~

ヘアカラーで髪色を明るくすると、褪色していく段階で赤みや黄みなどによる髪のくすみが目立ってきます。赤みや黄みは、透明感を感じにくくさせギラついた印象を与えることと、青みは透明感を与える重要な色であることは、以前から研究している印象学によって分かっています。そこで、青みを高める「レイリー散乱」という現象に着目しました。「レイリー散乱」とは、光の波長よりも極めて小さいサイズの粒子に光が当たることで、赤色や黄色を弱く、青色や緑色を強く散乱する現象です。
光は波長の長さが変わると、見える色が変化します。波長が短いと青や紫色に見え、長いと赤や橙色に見えます。可視光線(目に見える光)の中で最も遠くまで届くのは、波長の長い赤で、届きにくい色は波長の短い紫や青です。

赤は波長が長く、途中にチリや水の粒などの障害物があっても、粒子をかわして遠くまで届きます。波長の短い紫や青は粒子をかわすことができずにぶつかることで、光が散乱してしまい、遠くまで届きません。

レイリー散乱には、【青色の光を強くする】【全方向に光を放つ】という2つの特徴があります。【青色の光を強くする】については透明感あふれる艶を、【全方向に光を放つ】については髪が動いても色の沈みがなく均一でくもりのない魅せ方ができると考えました。

【コラム】空が青く見えるのはなぜ?

昼間の晴れた空が青く見え、夕方の空が赤く感じるのは、光の波長によって目に見える色が変わるためです。太陽の光は地球を覆う大気(空気の層)を通り抜けて届くまでの間に、空気の分子とぶつかり散乱します。その際に、短波長の青い光は他の色より強く散乱し、結果、空が青く見えるのです。日が沈む夕方になると昼間より太陽が遠くなり、光が進む大気中の距離も長くなります。短波長の青い光は散乱して地上に届きにくくなり、長波長の赤い光だけがほとんど散乱せずに届きます。昼間の空が青く、夕方の空が赤く見える理由は太陽の距離と光の波長の長さに関係しているのです。

シアーな艶髪に魅せる~レイリー散乱を再現するメカニズム~

日々のダメージにより毛髪内部には、空洞(ダメージホール)がつくられます。ダメージホールに当たった光は多方面に散乱し、髪がギラつきパサついた印象をもたらします。
新たにレイリー散乱を応用するにあたり、ダメージホールでの光の散乱を利用することにしました。光の散乱は、粒子の大きさによって色や方向が変化します。散乱する色や方向をコントロールすることで、やわらかな印象を高めることができると考えました。

開発した原料は、光の波長よりも極めて小さい約20nmの粒子を含むナノエマルジョン※。可視光の波長の範囲は380nm~780nmで、通常50-100nmとされる汎用性の高いナノエマルジョンと比較しても、新開発されたものは非常に小さい粒子だということがわかります。
※界面活性剤でO/W型に乳化させたもの。

光を当てると、長波長(赤など)の光よりも短波長(青など)の光を強く散乱させるので、青く見えます。

ダメージ毛に新開発のナノエマルジョンを塗布してみると、均一な透明感のある艶髪に見えることがわかります。青みが赤みの約16倍の強度で散乱されるため、くすみの原因である赤みや黄みを抑えられるのです。

レイリー散乱を応用した新メカニズムでは、青みを強く散乱させるだけでなく、その散乱光が全方向に均等に光を放射するため、髪の艶が動きによる影響を受けません。コントラストが弱いと 、髪が動いても沈みやギラつきのない、シアーな艶を感じさせます。

また、新開発のナノエマルジョンに含まれる粒子には、髪のくすみなどの原因に対応できる抗酸化や抗糖化成分を内包し、ダメージホールを補修する働きがあります。

美しく透明感のある艶髪へ。進化しつづけるメカニズム

ファッションと同様に、髪はその人の印象を大きく変えます。表現方法が目まぐるしく進化していくなか、光がもたらす髪の輝きとしなやかな動きに着目し、理想的な艶とやわらかな透明感を追求しました。
常に進化し多様化する自己表現方法を見据えながら、印象から髪を美しく魅せるためにどのようなケアをしていけるのか、私たちは研究を重ねていきます。

SHARE :