2025.06.03

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メラニン研究~髪の明るさとメラニン分布の関係~

アルカリカラー剤で毛髪の色を明るくしても、ブリーチ剤ほどは明るくなりません。
また、同じ条件で施術しても、個人差が出る場合があります。
そこで、毛髪の明るさを決める要素であるメラニンに着目し、脱色剤で処理した場合のメラニンの変化と見た目の明るさとの関係を検証しました。

髪の明るさとメラニンの関係

毛髪を明るくするアイテムには、ブリーチ剤とアルカリカラー剤があります。
(アルカリカラー剤については、こちらをご覧ください)

ブリーチ剤とアルカリカラー剤では、成分に違いがあります。
・ブリーチ剤:過硫酸塩などを含む脱色剤
・アルカリカラー剤(ライトナー):アンモニアなどを含む脱色剤

ブリーチ剤もアルカリカラー剤も、メラニンを分解することで毛髪を明るくします。ブリーチ剤は脱色力が強く、少ない回数で高明度まで脱色が可能ですが、ライトナーは繰り返し施術してもブリーチ剤ほどの高明度にはなりません。

これまで、毛髪の明るさはメラニンの量に関係すると考えられていました。しかし、実際には繰り返し施術することでメラニンの量は減るはずなのに、ライトナーではブリーチ剤のように明るくならないという現象が起こっています。果たして、この理由とは何なのでしょうか?そこで毛髪の明るさはメラニンの量だけではなく、メラニンの分布にも関連しているのではないかと考え、研究を始めました。

〈タカラベルモントのメラニン研究①〉メラニンの分布による脱色のしやすさ

実験では、メラニンの分布が「①全体均一の毛髪」と「②外側寄りの毛髪」となる人毛を用い、ブリーチ剤(Ps)とライトナー(Am)で処理しました。上記2種類の人毛でブリーチ剤とライトナーで繰り返し脱色処理を行い、脱色の回数ごとに明度を測定していくと、いずれも一定の明度で横ばいになりますが、最終的にブリーチ剤の明度の方が高くなりました。ブリーチ剤で作ることができる最大明度の明るさには、ライトナーでは到達できないことが確認されました。次に、毛髪の種類で比較した場合の最終明度は、ブリーチ剤では「②メラニンが外側寄りの毛髪」の方が、ライトナーでは「①メラニンが全体均一の毛髪」の方が明るくなりました。このように、ブリーチでは外側にメラニンが分布している毛髪が脱色しやすく、ライトナーでは全体もしくは内側に分布しているほうが脱色しやすいということがわかりました。

〈タカラベルモントのメラニン研究②〉メラニンの分布と髪の明るさの関係

毛髪の明るさとメラニンの量を比較するためにHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定を行いました。
ブリーチ剤を2回処理したもの(Ps2)とライトナーを8回処理したもの(Am8)を比べると、明度は同等ですが、メラニンの総量はPs2の方が多くなっています。実際に顕微鏡画像を見ると、Ps2の方は毛髪内部にメラニンが多く存在していることがわかります。

一方で、ブリーチ剤を3回施術したもの(Ps3)とライトナーを8回処理したもの(Am8)を比較すると、メラニンの総量はほぼ同値であるにもかかわらず、明度はPs3の方が非常に高く、顕微鏡画像を見ると外側のメラニンが特に少なくなっています。ここから判ることは、毛髪の明るさはメラニンの量だけではなく、メラニンの分布も関わっており、特に毛髪外側に位置するメラニンの量に明度が左右されるということです。

では、ライトナーで外側のメラニンが分解できないのはなぜなのでしょうか。例えば、外側のメラニンはアンモニアに強い構造を持っているのか、あるいは、単に外側のメラニンにアプローチできていないのか。
この疑問に取り組むため、ライトナーに含まれる有効成分(アンモニア)では外側のメラニンが分解できないものなのかを簡易的に検証しました。

〈タカラベルモントのメラニン研究③〉毛髪横断面のライトナー脱色

毛髪を切片化したものをアンモニアと過酸化水素から成る脱色液(pH, AL量をライトナーと同じに調製)に浸漬して、脱色を行いました。
これにより直接的に有効成分がメラニンにアプローチできるため、分解が可能かを判別することができます。ライトナーの施術10回分(AmD)に相当する処理を行ったところ、結果として、ブリーチ剤の施術12回分(Ps12)と同程度までメラニンの量が減少することがわかりました。つまり、内側にあるメラニンを分解するライトナーは、外側のメラニンを分解できないわけではなくアプローチができていない可能性があります。アプローチさえできれば、外側のメラニンも分解してブリーチ並みに脱色できる可能性があることがわかりました。アプローチできていない理由としては、ライトナーの有効成分であるアンモニアは反応速度が遅く、また、分子量が小さいため浸透しやすいことが考えられます。つまり、外側に浸透した時点ではまだ反応が弱いためメラニンを分解できず、内側まで浸透した時に分解力を発揮するため、内側のメラニンを主に分解しているのです。

いままで毛髪の明るさはメラニンの総量が影響すると考えられてきましたが、外側にあるメラニンの量も大きく関わるということが、今回の実験で初めてわかりました。
ブリーチ剤が高い明度を実現できる理由は、見た目への影響が大きい外側のメラニンを分解できているためであり、ライトナーも外側のメラニンにアプローチできるようになれば、ブリーチレベルの明るさに脱色できる可能性があります。
メラニンの分布には個人差がありますが、ブリーチでは外側にメラニンが分布している毛髪が脱色しやすく、ライトナーでは全体もしくは内側に分布しているほうが脱色しやすいということもわかりました。

最新テクノロジーでその先の領域へ

メラニンは毛髪明度の中枢を担うにもかかわらず、わかっていないことが多くあります。その実態を解明し、より効率的にメラニンを分解できるようになれば、ダメージのほとんどないブリーチ剤やブリーチ剤のように明るくできるカラー剤を作るなど、夢のような製品の実現が期待できると考えています。
 
タカラベルモントでは、美しさを求めるすべての人の想いに応えられるよう、最新のテクノロジーを活用し、革新的な製品開発にチャレンジし続けます。
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